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エネルギーの話

地熱と地中熱

地熱と地中熱
鹿児島県の地熱発電所

最も身近にある自然エネルギーの一つに、地球の表面を覆う土の中にある熱エネルギーがあります。それを「地熱」や「地中熱」と言いますが、同じように「地」が付いていますが、実はまったく正確の違うものなのです。

「地熱」は、地球の内部にあるマグマの熱を差します。

この熱を利用するには、

  1. 噴出する温水や水蒸気(言わば「温泉」ですが)をそのまま利用する方法
  2. 熱を不凍液などの液体に熱交換して利用する方法
  3. 地下に水を流し込んで熱により水蒸気に変化したものを利用する方法

などがあります。

 

地熱を使ったかまど『スメ』
地熱を使ったかまど『スメ』

鹿児島県の指宿では、噴出す水蒸気を利用したカマドが各家庭にあります。

地熱発電は、マグマに近い所にある温泉まで井戸を掘り(1000m以上)その高温の水蒸気で発電機のタービンを回しています。日本は火山が多いため、火山のない国と比べると地熱資源に恵まれています。

しかし、温泉や火山地帯でしか地熱が地表近くにない為どこでも使えるわけではありません。

 

「地中熱」は、地上の温度と地下の温度の温度差を利用する方法ですので、地下の温度が特に高くなくてもよいのでどこでも利用できます。地球の持つ熱と言うより、太陽エネルギーによる熱であるという方が正しいと言えます。

地下の温度は土壌の断熱機能により大気の温度変化の影響を受けにくく、一年を通してほぼ一定であることを利用し、古くから食品や氷の保存に利用されてきました。

地中熱利用の歴史

地中熱は最近注目されるようになってきたエネルギーのようにみえますが、実は昔から利用されてきています。

縄文人の竪穴式住居も地中熱を巧みに生活空間に取り入れたものといえますし、世界には同様な住居が数多く存在します。また、野菜を保存する室(むろ)など食品の貯蔵に地中の空間が使われてきています。

地中熱は実はこのように様々な形で利用されてきています。

上の原遺跡

 

現在では、冬場に地中から熱をすくい上げて暖房に使い、夏場は地上の熱を地中に放出して冷房するという形で利用します。このようなヒートポンプなどを使って積極的な利用を行うようになったのは20世紀に入ってからです。アメリカでは、1931年に住宅用として1946年には商業ビルで使われました。

地中熱利用ヒートポンプシステムは、欧米では1980年代から普及し始め、米国ではすでに100万台以上が利用されています。 日本では、2005年に愛・地球博で瀬戸日本館の空調設備として納入されたほか、東京大学柏地区キャンパスや2010年にオープンした羽田空港の新国際線ターミナル、東京スカイツリーなど大型施設を中心に利用が進められていますが、住宅用としては欧米や中国に大きく出遅れています。

 

世界の普及状況

 

欧米諸国や中国では、国のエネルギー政策で地中熱が取り上げられ、助成制度がありますが、日本では平成22年にエネルギー基本計画に書き込まれるまでは、エネルギー政策で認知されていませんでした。

地中熱の特徴

自然エネルギーは、天候や時間に大きく左右されると言われますが、地中熱は安定的に何時でも利用できます。 また、地域を選ばず日本中どこでも利用できることも大きな利点です。

 

地表から深さ10mくらいのところの温度は、年間の平均気温にほぼ等しくなっています。四国九州の南部で20℃、北海道で10℃、東京や大阪では17℃程度です。深くなれば地温は上昇しますが、100m程度の深さでは温度の上昇は2~4℃程度です。

日本では、冬と夏に地上と地中との間で10℃から15℃もの温度差が生じています。

つまり、温度が一定である地中は冬には温かく夏は冷たいのです。地中熱利用は、この温度差によって生じる熱エネルギーを効率的に利用する事なのです。

地中熱の利用方法

地中熱の利用方法としては、「熱伝導」「空気循環」「水循環」「ヒートパイプ」がありますが、日本の様に高温多湿(特に西・南日本地域)な所では、ドイツ等で一般的に利用されている室内に取り入れる空気を地中に埋設したパイプに通過させ暖めて(冷やして)室内に取り入れる空気循環方式よりも、地下水や不凍液等を循環させることにより熱運搬を行うヒートポンプを利用する方法が良いと思われます。

 

熱伝導、空気循環、水循環、ヒートパイプ

 

熱伝導 空気循環
熱伝導による地中熱の利用は、縄文時代の竪穴式住居にその原型をみることができ、アイヌのチセと呼ばれる住居も同様の原理で地中熱を利用しています。この地中熱の利用方法は現代においても住宅・建築物に適用されており、床が直接地面と接する土間床工法を基本にして、いくつかのバリエーションがあります。 空気を地中に通して地盤との間で熱交換するシステムで、住宅・建築物の換気システムの一環として、地中熱を利用しています。このシステムでは、空気を循環させるパイプを地中に垂直に埋設したり、あるいは空気を通すチューブを水平に埋めたりして熱交換を行います。このシステムで夏は冷風、冬は温風を得ることができます。
水循環 ヒートパイプ
地中と地表とをパイプで結ぶ単純な水循環システム、あるいは地下水をパイプに通し循環させるシステムで、わが国では主に融雪に用いられています。ポンプによる水の循環が閉じた系で行われるクローズドループのタイプと、汲み上げた地下水を熱利用した後、地中に戻すオープンループの2つのタイプがあります。また、融雪以外の利用の仕方として、地下水を室内のパネルに循環させ、放射冷房を行うシステムもあります。 ヒートパイプは、冷媒の蒸発と凝縮で熱を搬送するシステムで、全く動力を必要としません。冬に地中の温度が地表に比べて高いと、地中での熱交換でヒートパイプ内部の冷媒が蒸発し、軽い気体となった冷媒は地表に向かって管内を移動します。温度の低い地表環境では、冷媒は周辺に熱を与えることにより凝縮し、この凝縮した冷媒は重力により管内を下降します。ヒートパイプでの熱の搬送はこの繰り返しで行われ、融雪に利用されています。

地中熱ヒートポンプ

地中を熱源とするヒートポンプシステムでは、地中と外気との温度差が利用できるために、たいへん効率的な運転ができます。その結果、大きな節電効果とCO2削減効果をもたらします。省エネ対策及び地球温暖化対策に、地中熱ヒートポンプシステムの導入は極めて効果的です。

空気熱ヒートポンプと比べると、

  • 一般のエアコン(空気熱源ヒートポンプ)に比べて効率が高い。
  • 通常のエアコン(空気熱源ヒートポンプ)が利用できない外気温 -15℃以下の環境でも利用できる。
  • 熱を屋外に放出しないため、ヒートアイランド現象の緩和に寄与する。
  • 動力部分を地中に埋めることで原動機から出る低周波や騒音を遮断できる。

等の長所が挙げられます。

短所と言えば、設置時に熱交換器を入れる穴を掘る為の費用が発生する為、導入コストが高い事です。

しかし、長期的に観れば充分に回収する事は可能で、様々な工夫でコストダウン化が進められています。

 

 

図1には建物の冷暖房のほか歩道の融雪に地中熱を利用している青森県弘前市の施設で、地中熱と従来型のエネルギー利用を比較したときの、一次エネルギー消費量とCO2発生量を示しています。ここではエネルギー消費量は在来システムとの比較で、46%減となっており、またCO2発生量は50%減となっています。

 

青森県の公共施設
図1 青森県の公共施設(石上ほか、2010)

 

図2には東京都心のオフィスビルで、空調システムを空気熱ヒートポンプ(通常のエアコン)から地中熱ヒートポンプに更新したケースを示しています。空気熱と地中熱の電力消費量の実績を比較すると、年間で49%の節電・省エネとなっており、とくに夏季の節電・省エネ効果が大きいことがわかります。

分布
図2 東京都心のオフィスビル(笹田、2010)

地震による耐久性

熱交換部分を地中に埋設する為に、地震の際の事が気になりますが、地震の揺れは地表近くの軟弱な地盤や建物を通して増幅されるため、地下は地上に比べて揺れが少なく、もし地中の採熱管の破損が起きる程の大きな地震の場合、地上の建物自体の崩壊等がもっと大きな被害に成る為、耐久性は問題ないとされています。

 

出展:ウィキペディア、NPO法人地中熱利用促進協会

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