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エネルギーの話

風力

「風の力」をエネルギーとして利用する事は、紀元前から行われていました。現代では、風車をまわし、その回転運動を発電機に伝えて「電気」を起こす風力発電としての利用が進められています。

風力エネルギーの約40%を電気エネルギーに変換できる為、比較的効率の良い再生可能エネルギーとして注目を集めています。

風力エネルギー活用の歴史

風力エネルギーは、最も長い歴史を持つ動力源のひとつです。

羽根車に風を受けて回転させる風車を使い、水を汲み上げたり、粉を挽いたりと、そのエネルギーをさまざまな用途に利用してきました。

風車の起源ははっきりしていませんが、紀元前36世紀ごろエジプトで灌漑に使われたという記録があります。15世紀には、オランダで干拓地の排水用に風車が多用され始めました。

これらはのちに蒸気機関や電動ポンプにとってかわられましたが、少数が今も現役で排水に使われています。

風力を使って発電する事は、なんと1887年にはすでに発明されていました。しかし、圧倒的な発電量を誇る火力・原子力発電の登場で主役の座を奪われましたが、最近では地球環境保護の意識の高まりに合わせて、急速に注目を集めるようになりました。今や世界が最も熱い視線を注いでいるのが風力発電なのです。

風力資源の利点は、

  • 永久に枯渇することがない。
  • 昼夜を問わず利用可能。
  • CO2排出など大気を汚染する心配がない。

点など多々ありますが、特に注目すべきは、比較的安価に自家用風力発電が可能になる点です。

日本の風力発電実績は、残念ながら先進国の中にあって十分ではありません。原発の廃止が叫ばれる中、風力発電はすぐにでも積極推進していきたい重要なエネルギー・環境対策のひとつです。

風力発電の仕組み

「風力発電」の仕組みはいたってシンプルなものです。風を受ける(つかむ)為の羽(ブレード)の形状にいくつか種類はありますが、「発電の仕組み」はすべて同じで、風の力でブレードを回転させ、その動力で発電機を動かすというものです。

風力発電の仕組み

風力発電の種類

他の発電システム同様「発電効率」が風力発電にとっても重要な要素です。さらに、ブレードが回転するので「安全性」も重要です。

「発電効率」をいかに高めるかという事は、安定しない風をいかにして捕らえ、「弱い風」でも風車 をまわす(動かす)ことができるような「ブレードの形状」を持ったシステムを作るかということです。

風力発電の種類には、このブレードを回転させる為の力を得る方法として、揚力型と抗力型の二つに分けられ、さらに、風を受ける方向から、水平軸型と垂直軸型の二つの分け方があります。

●揚力型と抗力型

揚力型風車では飛行機の翼、抗力型風車では帆船の帆とそれぞれ基本原理が同じです。

揚力型風車
飛行機の翼が風に向かって進んでいくと、浮く力(揚力)を得るという原理をつかった風車で、ブレードの断面は、飛行機の翼に似ています。
抗力型風車
帆船が帆に風を受け、その力で進んでいくという原理を使った風車で、オランダの風車等がこのタイプです。
●水平軸型と垂直軸型

風向きに対して回転軸が平行にあるのが水平軸型、垂直にあるのが垂直軸型です。

水平軸型風車
水平軸型風車は、変化する風向きに対し平行であり続けなければならないため、風の来る方向を常に向いている方位制御機構が必要になります。小型の風車では方向舵などで受動的に制御する事ができますが、大型の風車では動力を使制御することもあります。水平軸型風車を使った風力計は、方位制御機構を利用して、風向きも同時に測定することができます。
垂直軸型風車
垂直軸風車は、回転軸が地面に対し垂直になるよう設置します。常に回転軸に対し直角に風が吹くため、方向制御が必要ありません。

それぞれの特徴を生かし、より高い「発電効率」を目指して様々に工夫され、開発されたブレードの形を持った、いくつかの風力発電装置の種類があります。

プロペラ型(2枚翼・3枚翼・多翼型)-揚力型水平軸風車

  • 一般的な風力発電に利用される航空機のプロペラのようなブレードを持った発電機。
  • ブレードの大きさに比例して回転力が強くなるので、大規模発電に適した代表的な形状です。
  • ウインドファームという大規模風力発電のブレードは、60メートルもあるものもあり、ゆっくり回っているように見えても、ブレードの先端は100キロ以上のスピードで回っています。
オランダ型-抗力型水平軸風車

  • オランダの風車に見られる伝統的な十字型の特徴有る風車形状です。
  • ブレードは、布などで作られています。
ダリウス型-揚力型垂直軸風車

  • 翼に働く遠心力が引っ張り応力として働く形状とした風車で、「泡だて器」に似た形状です
  • 小規模発電向き。
ジャイロミル型-揚力型垂直軸風車

  • 直線翼とすることにより可変ピッチを可能とし、微風でも起動しやすくしたもの
  • 小規模発電向き。
サポニウス型-抗力型垂直軸風車

  • 筒型の形状で上から見たときに渦巻きのような羽を持ったタイプです。
  • 小規模発電向き。
クロスフロー型-抗力型垂直軸風車


大阪府立大学

  • 筒型ですが、多翼を持ったタイプで、掃除機のファンに似た形状を持っています。
  • 小規模発電向き。

小型風力発電

電力会社が設置している「大型風力発電」は、立地条件や環境問題などさまざまな制約がある為、一般に利用する事には向いていません。

私達が、家庭で使える風力発電は、風車の直径が「約7m以下」のもの(受風面積が40m2未満)で小型風力発電として位置づけられ、発電出力が1KW以下のものは、特に「マイクロ風力発電」と呼ばれています。

小型風力発電の大切な要素

「小型風力発電」の機能性として重要となるのが次の3つの要素なります。

1)低騒音性能

市街地での活用が想定される「小型発電機」の場合、低騒音であることがとても重要な要素となります。「低騒音」を実現する上で具体的には、「風切音の少ない羽構造」がポイントとなります。

2)高効率性

大型風力発電以上に「発電効率」はとても重要な要素となります。「小型風力発電」における効率性としては、「発電量」を対象とするのではなく、「無駄の少ない発電制御システム」「放電の制御」の2つの要素が重要となります。

3)耐久性・安全性

大型風力発電においても大切な要素となりますが、特に強風時の安全性の確保がポイントとなります。「電気的な制御」と「機械的に風力を受け流す」2つの安全機能が必要です。

風力発電の形状と日本風土適性

大型風力発電では「水平軸型」が発電量の関係上有利となりますが、小型風力発電では、「垂直軸型」が適していると言われています。

日本の風土を考えた場合、その理由として大きく2つの要因があげられます。

1つは、季節の変化や日々の気候でも「風向き」は常に変化するもので、常に一定方向から風が吹くという条件の場所はとても少ないのです。ですから、方位制御機構を必要としない「垂直軸型」が有利となるのです。

もう一つは、発電機などの重量物(制御システムなど)をブレードと一体化する必要がある「水平軸型」に比べて「垂直軸型」の場合、地上に設置できる事ができるため、機器メンテナンスが容易になるのです。

この二つの要因から、小型風力発電の場合は「垂直軸型」が適していると言われるのです。

反面、機構が複雑になり、ブレードを大きくする必要があるなどの欠点もあります。しかし、ブレードの形状を様々に工夫する事で、これらの問題を解決している風力発電機が開発されてきていますので、今後の推進拡大に期待したいところです。

風力発電「デメリット」の理解

風力発電に限らず、自然エネルギーを活用した発電システムを「一般家庭」で利用する場合、「発電システム」のデメリットをきちんと理解した上で導入することがとても大切です。

周辺生活環境(近所世帯・自然環境)に悪影響を及ぼさない範囲で利用するという姿勢が必要です。風力発電に関してのデメリットとして考えられるのは、次の通りです。

  1. 低周波(振動)による人体への影響、睡眠への影響。 ※大型のシステム以外では問題ありません。
  2. 生産される電力が一定ではない。(風速の変動に伴って電圧などが変化)
  3. 夜間も発電されるため、余剰電力の発生確率が高い。
  4. ブレード(羽)の回転音による、騒音。
  5. 鳥などの生体への影響。(ブレードに巻き込まれることにより死亡)

家庭用として活用できる風力発電システム

「家庭用」に限った話しではありませんが、自然エネルギーを利用した「発電システム」をどの様に使うかを考える必要があります。「風力発電を導入する目的」を明らかにした上で目的に合わせて選択・判断することが望ましいと考えます。

■系統連系システム

電力会社の送電ラインに接続し、余剰電力は売るというシステムです。家庭用の太陽光システムと同じで、2012年7月からの買取価格が決められています。

■独立電源システム

発電した電気をバッテリーに蓄え、予め決めておいた電気設備に電力を送るシステムです。バッテリー電圧が設定値より低下したときは電力供給は止まります。

■切り替え電源システム

独立電源はバッテリー電圧が低下すると電力供給が停止しますが、切り替え装置により自動的に電力ラインに切り替えることができます。一瞬ですが必ず停電を伴います。短い時間の停電ですが、電気設備はいったん停止することになります。

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