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エネルギーの話 - 水力発電

水力発電のおいたち

セルフエナジーハウス研究会 水力発電
(写真出典:wikipedia)

水の力を動力として利用するという考えは、古代より続いています。流れる水の力を水車によって取り出し、その動力で製粉・紡績などを行っていました。水車は古代メソポタミアの時代に発明されたと考えられ、農地灌漑のために使用されたことが記録に残っています。古代ローマの技術者「ウィトルウィウス」が水車の事を記していますが、奴隷労働の豊富な古代ローマ社会では、余り普及しなかったようです。

文明の中心が中・西ヨーロッパ移行した中世以降に、安定した水量が得られる土地柄もあって、急激にその台数を増やしました。11世紀のイングランドの古文書では、推定人口140万人の地に5642台の水車があったことが記録されています。10世紀ごろからは、もっぱら製粉に限られていた使用法が工業用動力としても使われるようになりました。このような水力の利用が、欧州における産業資本主義発生の原動力となったのです。

電気が発見され、エネルギーとして利用され始めたころ、水車に発電機を結合した水力発電は発電の主力でした。世界で最初に水力発電が行われたのは1878年で、イギリスのウイリアム・アームストロングの屋敷で、彼の絵画展示室“クラックサイド”に電気を引くためのものでした。クラックサイドは昼でも薄暗く、招待客に夜でも絵画を閲覧してもらえるように、1km離れた川に個人で建設したデブドンダム(高さ10m、発電量4kw)が最初です。

セルフエナジーハウス研究会 水力発電
(写真出典:wikipedia)

日本では、明治21年(1888年)に宮城紡績会社で自家用水力発電(三居沢発電所)が設けられたのが記録が残っているものでは最初です。明治24年(1891年)には、琵琶湖疏水の落差を利用した蹴上水力発電所が世界で3番目に、そして一般営業用としては世界最初の施設です。

この電力は京都市内に供給され、明治28年(1895年)に日本最初の路面電車である京都電気鉄道(後の京都市電)が走るようになりました。当時は産業が十分に発達していなかったので、電力を自家用として用いる他は、電灯と電車の動力として小規模に利用されるだけでした。

水力発電が世界中に広がっていくのは、ドイツで高電圧での遠距離送電の技術が確立されてからです。この時代は、水力が主流の時代でした。やがて産業の発展により電力需要が伸びてくると、多くの大容量火力発電所が建設されるようになりました。いつしか火力発電所が台頭し、水力から主役の場を奪ったのです。さらに、Co2を廃出しない、原子力発電所が発電の主力となって行きました。

水力発電の話

最も一般的な水力発電は、水車を水の力によって回転させることで発電を行うもので、発電用水車と発電機を組み合わせたものを水車発電機(すいしゃはつでんき)といいます。

高いところにあるダムやため池、タンクなどから水を供給するときに、途中に水車発電機を設置すれば発電できます。落差さえあれば発電が可能という、適応可能範囲が非常に広い発電方法です。

太陽光発電や風力発電に比べて単位出力あたりのコストが非常に安く、また発電機出力の安定性や負荷変動に対する追従性では、数ある再生可能エネルギーの中で王者とも言われています。

マイクロ水力発電

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(写真出典:wikipedia)

私達が身近で使える小規模な水力発電は、マイクロ水力発電や小水力発電といわれるもので、中小河川、用水路、さらにはトイレの洗浄水等、様々な水流を利用して発電を行います。現在日本では、大型のダム開発適地はほとんど残っていないため、今後の水力発電の開発手段として期待されています。

マイクロ水力発電の明確な定義は存在していませんが、制度上は200kW未満の発電設備で各種手続きが簡素化されるため、この規模のものを総称してマイクロ水力発電としています。

マイクロ水力発電の利点は、ダムや大規模な水源を必要とせず、小さな水源で比較的簡単な工事で発電できるので、山間地、中小河川、農業用水路、上下水道施設、ビル施設、家庭などでの発電も可能です。このように、マイクロ水力発電の未開発地は無限にありますが、100年以上の長い歴史の中で技術上の問題はほとんど解決されているものの、法的な規制が普及を妨げています。

2010年3月31日総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会電力安全小委員会小型発電設備規制検討ワーキンググループがとりまとめた報告により、200kW未満の発電設備に関しての規制の一部または全部が不要となりました。

利点
  • ある程度の水量があれば、基本的にどこにでも設置が可能。
  • 太陽光発電、風力発電と比較して、天候等による発電量の変動が少ない。
  • 中小規模の水力発電を合わせれば、未開発の出力は1212万kW(2004年)とされる。
  • 中小規模の水力発電は、大型水力発電より生態系を脅かす心配が少ない。
欠点
  • 河川などには落ち葉やゴミ等が流れてくるので、その撤去等のメンテナンスが必要となる。
  • 異常気象等、降雨量が少ない場合に安定した電力が得られないこともある。
  • 設置時の工賃や機材のイニシャルコスト、メンテナンスにかかるランニングコストを考えると、採算性が低い。

水力発電の仕組み

現在行われている「発電」技術というものは、大分すると2つの仕組みにより構成されています。

ひとつが「機械的な発電方法」、もうひとつが「化学的発電方法」 です。「水力発電」の仕組みは「火力・風力・原子力発電」と共通の機械的な発電です。

自然エネルギーを活用した機械的な発電方法は、基本的に「何によって」発電機を回す(動かすか)という違いだけで、「火力・原子力・太陽熱」による発電は、エネルギーによって作られた「蒸気」で発電機を動かすもの、水力・風力発電では、水や風で直接風車や水車によって発電機を動かすという仕組みにより成り立っています。

水力発電の基本的な発電の仕組みとしては、「発電機のタービンを水車によって回す」ことにより発電します。

「水の流れ」を利用して水力発電機の水車を回すことになるため、「水の流れ」をいかにして生み出すかということが水力発電を活用するための条件となります。

最も古くから行われているのが「ダム」を利用して、水を落下させることにより「早い水の流れを生み出す」という落下方式。ただ、近年になって「地産地消」の概念に基づいて簡単な発電システムによる小規模発電に対する期待が高まりつつある中、「農業水路」「河川」などの水の流れを活用する方式(小規模・マイクロ水力発電)の研究開発が推進されています。

「水力発電」の技術的ポイント

セルフエナジーハウス研究会 水力発電

現在主流となっている水力発電システム
「水車:カプラン水車」のイメージ

”水の流れ”をいかに効率的に、発電につなげていくかという目的から考えると、水力発電 における技術的なポイントとしては、「水車形状の開発」ということになります。

現在大規模な水力発電システムに用いられている水車は「カプラン水車」があります。

水車の種類を分類していくと大きくは、「衝動水車」と「反動水車」の2種類に分類することができます。ちなみに「カプラン水車」は反動水車の一種となっています。

代表的な水車形状を紹介します。

1. 衝動水車
ペルトン水車

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  • 水をノズルから噴出させ、その勢いでバケットを回転させる水車です。
  • ノズルから噴出する 水の量を調節することにより、出力を簡単に調整できます。
  • 200m以上の高落差に適しています。
  • 有効落差:18m以上 流量:5L/s以上
ターゴインパルス水車

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  • 非常に少ない流量から採用可能。
  • ベネトン水車ほど落差を必要としない。
  • 安価な製品もある。
  • 有効落差:8m以上 流量:1.5L/s以上
クロスフロー水車

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  • 流量変化の大きい箇所に適しています。
  • 比較的安価。
  • 有効落差:2m以上 流量:10L/s以上
2. 反動水車
フランシス水車

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  • 水を取り込むケーシングの中に羽根車(ランナー)を設置し、そこを流れる水の圧力により 回転させる水車です。
  • 構造が簡単なので、マイクロ水力では最も一般的な水車。
  • 有効落差:15m以上 流量:30L/s以上
プロペラ水車

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  • 低落差でも設置可能。
  • 非常に安価なものから高価なものまで幅広い。
  • 有効落差:1m以上 流量:10L/s以上
サイフォン取水式・水中ポンプ型水車

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  • 水力発電機建屋が不要。
  • 機械本体は高価だが、付帯設備か省略出来るので結果として安価になる。
  • 有効落差:3m以上 流量:700L/s以上
螺旋水車

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  • 大昔から存在する農業用水車。
  • 配管工事がほとんど不要。
  • 有効落差:数10cm以上 流量:30L/s以上
開放周流型水車

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  • 既存の水路を使えば、配管土木工事は不要。
  • 発電量は、多くても数kw程度以下で下掛式では殆ど期待できない。
  • 有効落差:数10cm以上  流量は水車の大きさによる

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