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ドイツ視察ツアー報告レポート

「SCHÜCO」(シュコ)社

Writings&Photo:Iko Oki

予定を大幅に遅れてバスは、「SCHÜCO」(シュコ)の本社に到着した。

メルセデスチームのF1カーが飾られているロビーは人の気配が無い、今日は金曜日で時間はすでに5時をまわっているので当然の事だ、よほどの事が無い限り金曜日のこの時間に仕事をしている会社員はドイツにはいない。通訳の岸さんは受付の電話で担当者とやり取りをしている、どうやら此処は訪問先では無い様だ。急遽バスに戻って本来の訪問先、太陽光発電や太陽熱パネルを扱うソーラー部門のオフィスへ向かった。

「SCHÜCO」(シュコ)はドイツで1、2を誇る窓やカーテンウオール、太陽熱パネルや太陽光発電を製造・販売している会社。この会社のコンサルティンクをしているECOSのコーディネイトで、訪問が実現した。代表の上野氏の希望でもあった。

予定をかなり遅れての訪問だったのだが、営業部門・開発・製造の若いマネージャー達とECOSのプロジェクトマネージャーが丁重に迎えてくれた。彼らは、清楚な身なりをした若いビジネスマンである。挨拶もそこそこに、早速会社の歴史や商品の説明を受けた。この部署が扱っている、ソーラー製品は、大きく分けて発電と熱の二つのシステム。太陽光発電はシリコンやアモルファスの太陽電池を内外から仕入れて、発電システムとして組み立てている。

太陽熱は独自のアルミ成形技術を使って、他に類を見ないほど高効率の平面型集熱パネルを製作している。太陽の熱で熱媒体(不凍液の入った水)を暖め、水の入ったタンクに蓄熱する。そのタンクに風呂や暖房に使う水を通して加熱するシステムで、太陽熱のボイラーとも言える。なんと、タンク内に蓄える熱は100℃に達するという。平均は80℃程度だそうだが、それでも通常使うお湯程度の温度にするのは難しくないだろう。

最近では、同じ様なシステムを日本のメーカーも作っているが、普及率や製品の完成度はドイツの方がはるかに進んでいる。東京都は、この太陽熱利用を促進しようと補助金制度を取り入れているが、メーカーの指定など条件が複雑で利用度は極端に少ないという。ここでも、日本の自然エネルギーに対する場当たり的な政策が現れている。エネルギーの多くを暖房や給湯に費やすのは、ドイツも日本も同じだが、ドイツでの太陽熱利用はかなり普及している。やはり、熱は熱として利用するというのは実に合理的な考えである。

  1. 独自のアルミ技術による、シンプルで堅牢なフレーム。
  2. 集熱器の心臓部は、集熱効果を高める形状になっている。従来の円形よりも30%以上効率が良くなった。
  3. 直径1cmほどの鉄の球をガラスに連続的に当てて、強度試験を行う。想定されているのは、大粒の雹。
  4. 太陽光と同じ熱量を連続的に当てて、劣化状態を試験する機器。この光を直接見ると目が潰れるそうだ。
  5. スリムで美しいガラス面を持つ、集熱パネル。
  6. 蓄熱タンクのカットモデルも展示してある。写真の角度では分かりずらいが、下の螺旋部分は太陽から熱を運んできてタンクの水を温めるいわばヒーター部分。

 

説明の後、強度や耐久性を試験する研究室と製品が展示されたショールームから施工トレーニングルーム、工場と順番に案内された。研究室では、1センチ程の鉄玉を連続的にぶつけ、雹などの落下物への耐久性を試験を行っていたり、太陽の照射を長時間連続的に当てて、劣化を試験する等が行われていた。

集熱パネルは、真空管タイプの方が効率が良いと言われているので、なぜ平板タイプを採用しているのかと尋ねた所、一言で言えばフェラリーとフォルクスワーゲンのちがいであるという答えが帰ってきた。つまり、真空管タイプは確かに高効率であるが、真空管であるため耐久性に問題があり、そして高価である。

しかし、平板タイプは、耐久性や価格面で実用的であり、特にシュコ社では独特な形状のパイプとアルミの組み合わせ(特許を得ている)で、従来の平板タイプの2割以上の集熱効率を実現し、合わせて積雪4メートルの荷重にも耐えられる構造にしてあるという。実用的で、高耐久、そして手頃な価格、まさに大衆車と同じ考え方で製品化されていると言うことなのだ。フェラリーとフォルクスワーゲンの違いとは、実にわかりやすい回答だと感心した。

夕食の用意までしてくれて、日本の話を聞きたかったのだろうが、バスのドライバーの就業規則の関係で急いで食事をしなければならず、ゆっくりと話を出来なかったのは残念である。次回はビールを飲みながらゆっくり話をしましょうと、再会を約して挨拶もそこそこに、彼らに別れを告げた。

聞けば、彼らは皆30代の半ばという若さ、身のこなし、会話どれをとってもスマートなビジネスマン達である。若きスタッフに世界を相手にしたビジネスを託す、この会社の底力を感じた訪問であった。

現在、研究会とECOSがこの会社の日本のパートナーとの提携を進めているとか。シュコ社の太陽熱システムが、日本の住宅の屋根に設置される日は近いだろう。

  1. 海外部門のマネージャーを勤める、Mr.MichelSchwarz氏。彼は、会社の説明をしてくれた。なかなかの好青年である。
  2. 製品の特徴などを説明してくれた、Mr.AndreasRosenwirth氏。彼は、新婚だと食事のときに話していた。
  3. 製造部門のマネージャーを勤めるMr.MaikBerger氏。彼は、実直で無口な青年である。

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