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ドイツ視察ツアー報告レポート

ドイツ視察ツアーを終えて

セルフエナジーハウス研究会 理事
CMシステム福岡 代表
神代 和彦

Writings&Photo:Kazuhico Kumashiro

<展示場にて>

かなり以前のモデルハウスから最新のものまで、70棟弱の建物が見学できる展示場を訪れた。なんと一番古い建物で、30年を越えている・・・。

月数百万もの経費をかけて総合展示場へ出展する日本ではまず考えられない。私が以前在籍していたハウスメーカーでは、たった数年で次々と新しい建物に建替えていたので驚きである。

今振り返れば、かなり無駄なお金の使い方で、その負担を間接的にお客様に負担させていたことが恥ずかしくも思える。さらに、その古い建物がリフォームの紹介を前面に打ち出しているという訳でもなかったのが、とても印象的だった。

日本では、これは「新築」だ、これは「リフォーム」だと明快に区別して、お客様へのアプローチも変えて接してくる。

日本の展示場では、まるでハイエナのように営業マン達が来場者に群がり、質問攻めに合わせるのだが、ここではそういった光景を見なかった。(訪問したのは日曜で、比較的来場者も多いはずだが?)

さらに、日本の展示場は、若くて経験の浅いフレッシュな営業マンが担当する事が当たり前なのだがそのような若い担当者は、見かけ無かった。聞くところによると、ドイツでは家づくりに対してとても研究熱心だそうで、経験豊富な担当者が接客しなければ、案内は務まらないようである。

今回は、日本語が堪能なドイツ人に同行していただいたので、各会社の担当者への質問ができたので、大変有意義な訪問であった。

<ホームセンターにて>


郊外のホームセンターへ立ち寄る事もできた。広い店内には、サッシや建具・浴槽・断熱材等などが壁面にまで展示され、断熱材の施工マニュアルが記載されたチラシまで置いてあった。

駐車場の一角には特殊車両のレンタカー店が併設されていた。ドイツでは、外壁の補修や屋根のメンテナンス等も自分で行う事が多いので、高所作業用の車までも手軽にレンタルできる。日本のホームセンターでは、借りられるのは運搬用の軽トラックまでだ。

こういった部材等を運ぶこともあってか、簡易トレーラーを連結できるようにフックを取り付けている車を多く見かけた。ヨーロッパでは、ワゴン車が圧倒的に売れている事もよく知られている。欧米では建築主自身が住宅部材をホームセンターで購入し、自ら持ち帰り、地元のビルダー(大工さん)に建ててもらい、地元のペインター(塗装屋さん)に仕上げてもらうといった家づくりの方法は、珍しくないらしい。

ドイツでは、EU全域が営業・施工範囲と言う会社も存在するそうだが、日本のハウスメーカーのような大手住宅会社は存在しない。(全世界をみても日本だけの特殊なケースのようだ。)建築地域の気候・風土を熟知した地元の会社が、地元密着で家づくりをするのが本筋であると思う。

<課題として>

ドイツのスタンダードだからと言って、そっくりそのまま導入しても、それが如何に優れた技術であろうと、同じような結果が全て出るわけではない。むしろ条件が違うと大問題になることもありうる。そのために、今後はそれぞれの、前提や諸条件をよく踏まえて取り組みたいと思う。

例えば海に囲まれた日本の場合、塩害対策が必要なケースは多々ある。今ツアーで訪問したシュコ社の担当者へ、太陽光発電の商品について質問を投げかけてみた。

「日本では塩害仕様の商品が存在しているが、御社の太陽光システムは対策を施してあるのか?」しばらくの間を置いて次のような回答を返してくれた。

「イタリアをはじめ、海に囲まれたEU諸国へも販売しているので大丈夫だ」。

それまでは、テクニカルな部分の細かな内容を流暢に話していたのだが、塩害については具体的な技術的説明も無いまま次の質問へ移っていった。

「やはりそうか・・・、塩害にはあまり関心がないのだな!」ある程度予想していた回答であったので、特段驚きもしなかったが、国産メーカーでは、詳しく説明してくれるだろうし、具体的な対策を説明しないという様な対応はありえないのではないだろうか。

しかし今回の訪問地、ドイツでは塩害対策を考慮しなければならないエリアは北部の一部で、気候的に乾燥している国と多湿地域の多い国では、おのずと部品の耐久性等にも差が出るであろう。残念ながら今回はそのエリアへ足を運べなかったため、直に触れることが出来なかった。

海外から導入する部材に関しては、「日本に導入した際はどうなるのか?問題点は何か?」に常に視点を当て、取り組みたいと思う。

私は、偏った知識で営業活動を行っていたハウスメーカー時代から、独自に勉強し、研鑽を積んで来て「ある程度のレベルには達したのではないか」と、はなはだおこがましい限りだが、それなりの自負があったが、今回のツアーでまだまだ勉強不足と再認識させられた。常にお客様視点を軸にした家づくりを今後も発信していこうと、あらためて決意した。

余談になるが、利用者の自主性を重んじて改札口がない鉄道、アウトバーンでの運転マナー、そして、広告看板がとても少ない(ネオン看板に至っては殆んど無い)から伺われる節度ある国民性については大いに見習いたいと思った。

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