デンマーク サムソ島再生可能エネルギー100%で自給自足の島
(社)セルフエナジーハウス研究会で推し進める「自給自足」をなし遂げている「島」がデンマークにあります。ドイツでも「村」でやっているところ(ヒューンデ村)が有り私達はドイツへのエコツアーで訪問し勉強してきました。デンマークのサムソ島の事も早く記事にしたいと思っていましたが、この記事がSMA×ECO誌に載せられていましたので、又伝えたいことが同じでしたのでそのまま転載させていただきます。
セルフエナジーハウス研究会 上野 勝
この記事は「SMA×ECO」(2012年12月6日発行号)に掲載されたものです。取材協力 デンマーク大使館 中島健祐さん
デンマーク サムソ島再生可能エネルギー100%で自給自足の島
1998年からの10年間で、島で使用するすべてのエネルギーを再生可能エネルギー(※)に転換させることに成功したデンマークのサムソ島。美しい自然と風車が調和するこの島の人々が力を注いできた取り組みの歴史と今を見ていきましょう。
※太陽光や太陽熱、風力、水力、バイオマスなど、自然の力によって繰り返し使うことができるエネルギー。
再生可能エネルギーを自給自足
豊かな自然と農地が広がり、夏にはキャンプや避暑に多くの人が訪れるデンマークの観光地、サムソ島。のどかな島が「再生可能エネルギー100%の島」となるきっかけは、1996年に政府が策定した「エネルギー21」という計画でした。計画には2030年までに国内のエネルギー消費量の35%を、電力では50%を再生可能エネルギーにするなどの画期的な目標が盛り込まれていました。
この目標を具体化するための実証実験として、政府は「再生可能エネルギー100%を目指す島」のコンペを開催し、全国にアイデアを募りました。これに5つの島が応募し、その中から選ばれたのがサムソ島だったのです。
応募するにあたって、島に住む人々が自ら計画を練り、100%再生可能エネルギーの島になることを選んだのがすごいところ。行政の主導ではなく、住民たちによって計画は進められたのです。プロジェクトの中心人物ソーレン・ハーマンセンさんは、島の中学校で環境学を教えていた教師でした。
島民には反対意見も多くありました。アイデアには賛同するも、大きな音を発することなどから、自分の土地には風力発電の風車を建てたくないという声もありました。しかし、ソーレンさんたちはあきらめず、2年かけて島民一人ひとりと対話を重ね、プロジェクトへの参加を促し、島の人々にとって最良のエネルギーのあり方を求めていったのです。
サムソ島のプロジェクトには、対話を重んじるデンマークの国民性が活かされています。それは小さなときから育まれる習慣ともいえるものです。小学校でも、子どもたちの間で意見が対立すると、自主的に集まって話し合い、違いを認めながらお互いに理解し合うことを促す教育が行われています。
住宅の屋根に設置された太陽光パネル。太陽光による発電用と、太陽熱による温水用の両方が利用される。写真提供:[左]©アマナイメージズ [右]Samso Energy Academy
島内では、石油を使った暖房を、ヒートポンプや木材ペレットのストーブ、あるいは暖炉に切り替える家庭が増えた。写真提供:Samso Energy Academy
小さな島の暮らしが世界のお手本に
サムソ島では、国などの補助だけに頼らず、「自分たちでお金を出して、風車を建てる」ことにこだわりました。自分たちで建てた風車が、自分の生活を支えていると分かれば、誰も風車を邪魔には思わないと考えたからです。実際、島の風車は個人が所有したり、複数の農家の出資で運営される協同組合が所有したりしているのです。
取り組みを始めてから10年、サムソ島は目標どおり「100%再生可能エネルギーの島」となりました。現在、島には15基の陸上風車と10基の洋上風車があり、電力を自給自足しています。
[左] 発電用風車と島の子どもたち。写真提供:Samso Energy Academy [右] サムソ島の取り組みを伝える絵本。日本でも発行されている。『風の島へようこそ(福音館書店)』アラン・ドラモンド 作 まつむらゆりこ 訳
島民の生活に必要な電力需要は陸上風車だけですべてまかなっており、余剰電力を電力会社に販売するほどです。洋上風車は年間約50万人の旅行客が使う電力をまかない、さらに車や本土と島を結ぶフェリーが使用する化石燃料の使用によって排出されるCO2を相殺するだけの電力もまかなっています。
また、冬の長いサムソ島では暖房のためのエネルギー消費も膨大ですが、熱エネルギーの約70%を再生可能エネルギーでまかなっています。島には麦わらを使ったバイオマス燃料プラントが3カ所、太陽熱と木質チップの燃料プラントが1カ所あり、地域の暖房や給湯などの熱を供給しています。
写真の太陽熱パネルと、木質チップのボイラーを組み合わせた地域熱供給プラントもある。写真提供:Samso Energy Academy
[左] バイオマス燃料にする麦わら。 [右] 地域熱供給プラント内の設備。写真提供:Samso Energy Academy
こうしてサムソ島は大きく変わりました。再生可能エネルギーが島の新しい主役となり、雇用も生み出しています。観光客も増え、街をうるおしています。もともと中世の古い風車や農家が保存されたエコミュージアムの島として人気がありましたが、「再生可能エネルギーの島」へと変貌をとげてからは、視察や体験学習の目的地としても大きく注目されるようになったのです。
住民の意識も高まってきました。サムソ島では、一人ひとりの行動が大きな目標を実現させ、世界をリードする立場になったのですから。「Think Global,Act Local」──北欧の小さな島に暮らしていても、世界的な視点でものを考え、地元で自分がどう行動するかが重要になるという考えが人々に行き渡っています。こうした大人たちの考え方は、未来をになう子どもたちにも受け継がれていきます。
ガラス窓と屋根に太陽光パネルが敷き詰められたサムソエネルギー環境事務所(写真左)では、環境教育の一環として子どもたちにソーラーカーや太陽熱を利用した調理などを体験してもらっている。写真提供:Samso Energy Academy
★私たち(社)セルフエナジーハウス研究会も微力ながらこのような小さな単位(地域、町、島)での自給自足の家、公共施設、地域の提案を続けいつしか日本でも少しずつ定着していくことを望みます。
セルフエナジーハウス研究会 代表 上野 勝
2014年10月14日【20】